菊炭の里

池田園芸高校の現地研修会

みなさん、ご存知でしょうか。大阪府立池田園芸高校は1915年に創立された106年もの歴史のある高校です。先進的な理数教育を実施する高等学校として「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の指定を文部科学省から受ける等、科学的で探求心のある人材育成に取り組む農業系専門高校です。
一年前に校長先生から菊炭の見学のお話があり、少しずつ今日の準備をしてきました。
今回は山で木の伐倒体験をするので、全員ヘルメット着用です。

素晴らしい快晴。土曜日にもかかわらず、21人の生徒のみなさんが参加。
池田市の学校をバスで出て、9時45分頃さとやま創造館に到着です。

小谷さんのあいさつで始まります。
「池田園芸高校のみなさん、能勢町田尻へようこそ!今日はみなさんに伝えたいことがいっぱいです。菊炭の話と見学、そして植樹地での伐倒体験まで、タイトなスケジュールですが頑張りましょう!」

そして高校生の代表の方からごあいさつがありました。
「色々なことを学びたいと思っています。今日はよろしくお願いします!」

では、菊炭窯の前に移動…。
おっと忘れていました。私たち菊炭の里のメンバーもご紹介!今日は私たちが山の現場をサポートします。

菊炭窯の前に移動しました。尾澤さんから炭の火おこしを教わります。
尾澤さんは、普段の生活の中で調理や暖を取るのは菊炭。「毎日炭を使っていると、案外簡単に火おこしができるんですよ。」と数枚の新聞とマッチを準備。「ところで、若いみなさんはマッチを使ったことがあるのかな?」
本当ですね。最近はマッチを見なくなりました。
ともあれ、みなさん興味津々という感じです。

火おこしは「けんけら」という炭を使うのがポイント。
この細くて小さな炭が見えますか?

「けんけら、けんけら」と小さな風鈴のような音が聞こえてきました。
静かにしないと聞えないこの音。みなさん、耳を澄まして…「けんけら、けんけら…」

無事に着火した後は、みなさんの足元に火鉢ならぬ菊炭コンロ。火がいこってくると、何とも美しいオレンジの遠赤外線がコンロの中に広がります。いこった炭の香りもしてきましたね。


そして小谷さんから茶の湯炭としての歴史や冬場の製炭方法の説明を受けます。「茶の湯は一期一会の思いが根底にあります。今日のみなさんとの出会いも一期一会かもしれない。大切にしたい時間です。」とお話しされました。
菊炭はその外観だけでなく、茶の湯では定められた位置や量が時間のめやすとなるのです。
また、クヌギの伐採は自然の循環を損なわなず、合理的な台場クヌギとして循環すること、カーボンオフセットのエネルギーであること、そして製炭の厳しさ等まさに若いみなさんへのメッセージを込めたお話しでした。
菊炭に接するのは初めての生徒さん達。こころに残ったことがたくさんあるのではないでしょうか。

では、そろそろ植樹地へ登っていきましょう。見えているのが6月の植樹地です。

さとやま創造館から歩いて植樹地へ登ります。
途中の道や植樹した木々を見ながら鹿の食害等、里山の獣害をみなさんに説明しながら登っていきます。
着きました!ここが菊炭窯から見えていたクヌギ苗の植樹地です。
(残念、ここから望む妙見山等遠望の写真を撮り忘れてしまいました…)

ここからは山での伐倒体験。みなさんヘルメットを被ってくれぐれも安全対策を怠りなく。

この木の伐倒を行います。二本のロープがかかっていますが、一本はみなさんが引っ張って倒すもの。もう一本は木の倒木を安全に行うために補助としてつないだもの。この二本のロープは早朝の準備ではしごを登って設置しました。

尾澤さんがチェーンソーで伐倒します。
山に響くような大きな声で周囲の安全確認をしてから、取り掛かります。
幹にチェーンソーで切れ目(専門的には受け口だそうです)を入れて…
「伐倒方向良し!!」

「さあ、しっかりあの木を見て!
尾澤さんは追い口を入れています!」

その後小谷さんの号令で、一斉にロープを引いて木を倒します。

大きな音を立てて木が倒れてきました。
伐倒は倒れる方向を間違うと思わぬ事故にもつながります。実はこの伐倒のために菊炭の里メンバーが事前に伐倒場所を整備していました。特に山の仕事は緊張感の高いもの。準備を怠ってはいけないのです。

次は自分たちで周囲の雑木をノコギリで切っていきます。
木の切り方にはルールがあります。そのルールを一人一人が守って安全に作業を始めましょう!
「気を抜かず、チームで動いてください。」

女子も男子も積極的に幹や枝を切っていきます。
山が大好きな美谷さんがしっかりサポート!

切った木を運ぶにも慣れない山は動きにくいもの。
人にあたらないように用心して、周囲の木にも気をつけて。

元古さんが実際に鹿の食害にあった木の説明をしてくれています。
「こんな風に鹿に食べられた木があちこちにあるんですよ。」


「木の伐倒のことをもう少し詳しく教えて下さい。」
と小谷さんに用語のこと等いろいろ質問です。
この機会に何でも聞いてください。

そろそろ帰りの時間も迫って来ました。
「みなさん下山しましょう。足元は乾燥しや急斜面です。上るより下りる方が大変です。
滑らないように注意して下りて下さい。」


途中にある数年前にボランティアのみなさんが植樹したもの。ここまで大きくなればしめたもの。しかし、ここから菊炭になるにはもう10年以上は必要なのです。木々が育つということは時間を必要とするのですね。

さとやま創造館へ無事帰還。
みなさん、今日の体験はどうでしたか?
これからも里山に関心を持ち続けて下さいね。


また来てくださいね!
みなさん、さようなら。

最後に大切なことをお伝えします。
今回の大阪府立園芸高校は農業系の専門高校。私たちの里山のドングリを持ち帰り、学校で育てて下さることになったのです。菊炭の里の「ドングリのホームステイ事業」を専門高校の協力を得て展開できることは本当にありがたいことです。
今年のドングリが二年先には立派な苗になってこの里山に帰ってくるのです。どうぞよろしくお願いします。

菊炭の里