菊炭の里

ドングリのホームステイプロジェクト (1)

清々しい秋空のもと、菊炭の里メンバーが会場のさとやま創造館に集まって来ました。いつもの赤いのぼりを立てたり、横断幕を張ったり、会場設営に大忙しです。今日は山に行ってドングリを拾うイベントですが、さとやま創造館は大切な昼食会場になっています。恒例の豚汁(なんと今日は猪汁に変更!)は薪をくべて羽釜で炊きます。今日の猪汁のお肉は猟師の北山さんかな…?
また、農家のたかひろ君がたくさんのサツマイモを準備してくれました。しっかり濡れた新聞で一つ一つ包んでいきます。こちらは後で炭火で蒸し焼きにします。

拾ったドングリは、ポットに植えるのに土やたい肥を準備して………。この大きなふるいは元古さんのお手製!

そうしている内に「山のサムライ(菊炭クラブ)」のメンバーが次々と到着。みなさん都会に住みながらも、草刈り機を片手に能勢や周辺の山々の保全活動に力を注いでおられる方々です。まさに無私のサムライ達。

さて、メンバーもそろい、参加者のみなさんも来られました。
今回は石橋南小学校の先生も参加して下さっています。ぜひ、山の楽しさを子ども達に教えてあげて下さいね!

「おはようございます!」美谷さんの大きな声が聞こえました。会長は所用で欠席のため副会長の元古さんのご挨拶から始まります。

「みなさん、私たちの菊炭の里へようこそ。今回はクヌギの苗をドングリから育てて、成長した苗をこの山に植樹していくプロジェクトです。獣害から逃れて都会のみなさんの家にホームステイさせてください。そして育った苗はやがてクヌギの木となり、私たちの菊炭となっていきます。」

一つのドングリが都市と農村をつなぎ、里帰りした苗がクヌギの森へと育っていきます。小さなドングリですが、果たす役割は大きいのです!

プログラムのはじまりは小谷さんの「菊炭窯の見学と菊炭のお話し」から。みなさん、菊炭窯に移動。
菊炭の歴史や菊炭が持つ素晴らしい性質(例えば遠赤外線効果)について丁寧に教えていただきました。窯の前では実際に炭火をおこしてくれていました。目の前の菊炭は、長い間追求してきた機能と美しさが両立された結果です。
この大きな窯の中で漆黒の菊炭がつくられていきます。山から木を切り出し、窯に詰め、窯で焼くという一連の話にはいつも頭が下がる思いがします。小谷さん、弟子のみなさん、くれぐれもケガをしないで、この仕事をつないでいってくださいね!

菊炭窯見学の後は、いよいよドングリ拾いをするため、向かいの山へ。
普段は歩かないような田んぼの横の道を通り抜け、少し急な斜面を登っていきます。この斜面も山のサムライ達が年に何回も下草刈りをして下さっているので、安心して入ることができます。

到着したのは山の中のクヌギ林。
「うわー!景色最高!」「心が洗われるような緑豊かな所ですね!」と参加者の方々から感嘆の声。(でも、そんな高い所には登っていません。)
ここは昔クヌギが植えられた林。クヌギの広葉樹の葉の隙間から日差しがいたる所に差し込んで、地面を明るく照らしています。普段はシカや小動物しか入らない場所です。都会の空気とはずいぶん違うのかもしれませんね。

さあ、ドングリを拾いましょう。
子ども達はあちこちで沢山見つけていました。みんな、目がキラキラです!

ちなみに、向こうの青いネットはドングリ集めのトラップ。もし本番でドングリがとれなかったら大変だ、と事前に菊炭の里メンバーでトラップを仕掛けていました。でも、その心配は無用だったようです。

ポケットいっぱいのドングリを拾うことができました。
あ、誰かクヌギの木を蹴ってドングリを落としてる!確かに結構落ちてきました。(良い子のみなさんはマネをしないように…。)
「この木は何ですか?かっこいい!」尋ねられたのは、台場クヌギの木。何年も前に菊炭の材をこの木から切り出し、鹿害を防ぐために地上1メートルの高さで残しているのです。
他の木にはないごつごつとした荒い風貌は、山の厳しさと優しさを表しているようにも見えます。そしてその1メートルの高さから新しい太い枝が何本も伸びてきて、もう一度菊炭になるのです。先人が大切にしてきた山の循環です。

そろそろ山を下りる時間になりました。さとやま創造館へ戻ります。
みなさん、ドングリをしっかり持って下りていきましょう。

この3種類の苗は昨年の秋に植えたドングリが成長した姿です。でも、高さや元気さがずいぶん違うようです。持って来てくれた吉水さん、この違いはなぜですか?

「一番背の高い苗は、昨年最初に拾って自分が使っている花用の土で植えたもの。2番目は去年のホームステイの事業で田んぼの土で植えたもの。3番目は去年作ったドングリの畑から今年の6月にポットへ植え替えたもの。土や育つ条件の違いで成長にこれだけ差が出てくるんですよ。」実は吉水さんは色んな花を育てる名人。この事業のためにいろいろ研究してくれています。

ポットと土を準備です。土とたい肥をしっかり混ぜてスコップでポットに入れます。

その上にドングリを乗せるのですが…。乗せ方にコツがあって、ドングリを横に寝かせます。横になったドングリの頭から芽と根っこの両方が出てくるのです。

そしてさらに土を軽くかぶせて完了。
(このドングリは、1週間前に菊炭の里のメンバーが拾って水につけておいたもの。ドングリの中の虫を駆除するためにどうしてもこの作業が必要になります。)

さすがにお腹が空いてきましたね。そろそろお昼にしましょう!
 猪汁鍋の湯気がいい匂い。そして今日はみなさん、マイ箸マイ椀。元古さんがとりどりのお椀に猪汁をついでくれました。



 サツマイモはスペシャル屋根の炭火焼き。サクッと割ると、中はなんて鮮やかなオレンジ色!たかひろ君の新“炭火焼き”です。
更に元古さんからこの日のために作ってくれた渋皮煮をいただきました。小谷さんの黒豆や美谷さんの焼き栗など、ここでしか味わえない秋の味覚を満喫しました。美味しい味覚をいただきながら、みなさんあちらこちらで話が弾みます。
こうして食を楽しみながら今日の出来事やこれからのことなどみなさんとお話しできる時間は本当にうれしい時間。こんな時間を大切にしたいと菊炭の里メンバーはいつも思っているのです。

今日のテーマはドングリのホームステイ。みなさんのお家にドングリをしばらくホームステイさせて下さい。少しだけ水をあげれば大丈夫。「1トレイもらって帰るよ。」とみなさんどんどん車の荷台に乗せてくれています。吹田市、箕面市、池田市、遠くは滋賀県大津市のお宅まで、いってらっしゃい!

来年の春には小さい芽がひょっこり顔を出します。それまでの数か月は変化のない土のままですが、辛抱強く待っていて下さいね。再来年の春には苗も背が高くなっています。その時にはみなさんと一緒に田尻の山で植樹会です。
その日までホストファミリーのみなさん、よろしくお願いします。

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